NaS電池とは

中勢技研が開発する 安価で安全なNaS電池とは 

            第63回 電気学会 電池討論会:福岡国際センターで講演しました 

                    ( 学会発表内容は 下部を参照してください )

βアルミナセラミックスの隔壁(セパレーター)が、もしも破壊されたときに生ずる
ナトリウムと硫黄の反応を極力少なくして発火を抑制するもの
厚さ方向の中央に陰極室を持つ板状の隔壁を持つ電池


陰極室内のNa容積を極限まで少なくすることで、隔壁が破損するトラブルが発生したとしても      反応するナトリウムが少量であるために、発熱が抑制コントロールできるため火災に至りません。


板状隔壁では、表面 及び 裏面 の両面で 充放電作用ができるため、隔壁面積を2倍に増大化できる     高性能の電池になります


Na:ナトリウムタンクのサイズとS:硫黄タンクのサイズを大きくすることで             連続放電稼働時間を より長時間に設定することが可能となります                  大容量の  ” NaSタンク電池 ”  と命名いたしました


タイル製造用のプレス成型装置を流用できるため多くの既存の加工機械で成型が可能となり        価格の低減方向へ大きく寄与出来ます


NaS電池を構成する ナトリウム、硫黄、隔壁(βアルミナ)で電池が働く 原理の説明は 上をクリック


放電 充電 ナトリウムイオンが隔壁を通り 逆向きに電子が通り電流が発生します          300度前後の環境下で動作します

ガソリンエンジンが動作するには ガソリンが着火して内燃機関内で爆発し              発生する熱は800℃を超えています                                            300℃で動作するNaS電池 最初は高温でびっくりしましたが、内燃機関よりも            ずっとマイルドな温度環境でした


風力発電、太陽光発電 などから電力供給を受け 大容量のNaSタンク電池が蓄電します
大規模蓄電所や商業施設をはじめとする 大型サイズから
家庭用サイズまで対応する計画です
いずれも 高性能で大容量の 中勢技研の大容量NaSタンク電池が 電気を守ります


学会発表内容 その1

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大容量のNaタンク及び大容量のSタンクを持つNaS二次電池

〇大川 宏1(有限会社中勢技研1)

NaS secondary battery with large capacity Na tank and large capacity S tank

Hiroshi Ohkawa,1 (Yugenkaisya Cyuuseigiken ,1)

電池の種類            Liイオン電池         NaSタンク電池

平均作動電圧           2.4~3.8V                2.1V

質量エネルギー密度(Wh/kg)   150~200        300~400

体積エネルギー密度(Wh/L)    200~400         350~400

自己放電             1~5%/月          ほとんど無い

安全性              △~〇               〇

価格               高い              極めて安い

1. 定義 

定格放電時間が24時間以上で、多量のNa及びSを収納するNaタンク及びSタンクを持つNaS二次電池をNaSタンク電池と定義する。NaS二次電池は稼働温度の300℃程度の高温を維持するに必要な熱源を充放電時の内部抵抗に基づく発熱で維持するため、通常1日当たり8時間放電及び8時間充電を行うに必要なNa量及びS量を持つ。従って、NaSタンク電池は通常のNaS電池の3倍以上のNaおよびSを保持している。

2. 構造上の特徴

 NaSタンク電池は、通常のNaS電池のNa量、S量、Naタンクの容量及びSタンクの容量のみを3倍以上とし、隔壁等の他の構成要素を同じ大きさのものとしたものである。NaSタンク電池は通常のNaS電池と同じ大きさの隔壁を使用しているため充放電電流は通常のNaS電池と同じとなる。異なるのは充放電時間のみで、3倍以上の充放電時間とすることができる。すなわち蓄電容量が3倍以上となる。

3. 利点

NaSタンク電池の第一の利点は極めて安価であることである。同じ隔壁を使用し、増蓄電容量部品のみを大きくしたNaSタンク電池の単位蓄電容量当たりの価格は、増蓄電容量部品の大きくした倍率に反比例するように安価になる。具体的には10kWhの蓄電容量を持つ通常のNaS電池の価格を100万円(蓄電容量1kWh当たりの価格は10万円)、その増蓄電容量部品の価格を10万円と仮定した場合の増蓄電容量部品を3倍及び30倍に増大したNaSタンク電池のコストを試算する。増蓄電容量部品の価格は増大した倍率と同じ倍率で高くなると仮定する。3倍に増大したNaSタンク電池の価格は130万円、蓄電容量1kWh当たりの価格は3.33万円、30倍に増大したNaSタンク電池の価格は400万円、蓄電容量1kWh当たりの価格は1.33万円となる。

 NaSタンク電池の第二の利点は、製造に必要な資源が豊富で極めて安価であることである。NaSタンク電池を構成する主な元素はNa、C、O、S、Al、Si、Feで地球上に豊富に存在し安価である。例えば、Na及びS電極剤の価格は0.06$ kWh-1程度とPb/PbO2及びC6/LiCoO2の10$ kWh-1及び90$ kWh-1と比較し圧倒的に安価である¹。脱炭素の電気の時代には全世界で使用する電力の10%程度を蓄電する必要があるとしても、資源的には問題ない。

 NaSタンク電池の第三の利点は体積エネルギー密度が350~400Wh/Lと極めて高いことである。NaSタンク電池の電力キャリアとしての能力は液体水素の1/3程度の高いものとなる。リチウムイオン電池と比較したNaSタンク電池の特性を表に示す

4.利用形態

 NaSタンク電池は常時300℃程度に保持する必要があり、且つ保温に要する熱量を電池稼働時の内部抵抗に起因する発熱で賄うことが必要である。このため最小のNaSタンク電池でも、100㎏程度、体積で0.5m3程度となる。この最小のNaSタンク電池は蓄電容量10kWh程度で家庭用として使用できる。現時点で最も相応しいNaSタンク電池は再生可能発電の出力安定用の二次電池としての使用である。従来の二次電池の3から5倍程度の蓄電容量を持つNaSタンク電池が使用できる。電力不足が予想される場合に容易に必要な電力を蓄電できる。

 連続放電が1週間とか1か月あるいはそれ以上の長時間にわたり放電が可能なNaSタンク電池は大容量の電力の輸送を可能とする。砂漠地帯で安価に発電された電力をNaSタンク電池に充電し、コンテナ船等で消費地に運び放電使用する。電力を水素に変えて運ぶより安価に運べると考えている。この長時間放電が可能なNaSタンク電池は、電力キャリアとしての液体水素に代わるものとなると思われる。船舶の液体水素を収容する空間の2~3倍を確保し、そこにNaSタンク電池を収納することによりモータを駆動して航海できる。液体水素に必要な高度の断熱壁とか発電施設は必要としない。放電したNaSタンク電池は港で充電済みのNaSタンク電池と交換することで船舶は就航できる。

(1) C.Wadir et al./ Journal of Power Sources 196(2011)1593-1598  


学会発表内容 その2

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NaS二次電池の安全技術

〇大川 宏1(有限会社中勢技研1)

NaS secondary battery safety technology

Hiroshi Ohkawa,1 (Yugenkaisya Cyuuseigiken ,1)

1.NaS二次電池の安全性について

 NaS二次電池は溶融Naと、溶融Sと、溶融Naの大部分を収納するNaタンクと溶融Sを収納するSタンクと残りの溶融Naを収納する陰極室を持つβアルミナ製の隔壁からなる単電池を多数接続し、断熱容器内に収納したものである。多量の溶融Naと溶融Sが損傷されやすいセラミックス製の隔壁を介して存在しているため高度な安全性を必要とする。

2.管状隔壁を持つNaS二次電池と板状隔壁を持つNaS二次電池の安全性について

 図1の管状隔壁5を持つNaS二次電池¹では管状隔壁5の内側にNaタンク6を設け、さらに、隔壁の内周面に近接して安全管11を設け、隔壁の内周面で区画され溶融Naで満たされる陰極室の容積を最小として安全性を高めている。しかし     

安全管11による陰極室の容積最小化機能が十分でなく管状     図1         図2

隔壁5の破損に伴う火災発生の可能性がある。

図2の板状隔壁を持つNaS二次電池²では、①大部分の溶融Naと溶融Sとが間隔を隔てた別々の金属製タンクに収納されて互いに隔離されている。次に②Naタンクと陰極室を所定の長さを持つ金属細管21で連結し、充放電時の必要な最少量の溶融Naの移動を可能にし、隔壁破損時のNaタンクからのNaの流出を最小にしている。金属細管21を使用できるのは充放電時に必要とする溶融Naの必要移動量が0.5kg/kWhと極めて少ないことによる。このNaS二次電池では隔壁が破損して破損個所から溶融SがNaタンクに向かう途中、金属細管内でNa成分の多い硫化ソーダが生成固化して溶融Naと溶融Sとの間に介在し、NaとSとの反応を止め、安全性が確保される。

これらの理由により、安全なNaS二次電池は図2に示す板状隔壁を持つNaS二次電池であると思われる。

3.NaS二次電池のさらなる安全技術

 3-1 Naタンクと陰極室との間の溶融Na通路の機械的遮断技術³

 この遮断技術は②の金属細管を補強する安全技術で、Naタンクと陰極室との通路に溶融Naより密度が高く溶融Sより密度の低いボール弁を設け、隔壁が破損し溶融Sが金属細管に流入することによりボール弁を浮上させて弁口を閉じる遮断手段を設けるものである。ボール弁が弁口を閉すことにより溶融Sと溶融Naとは遮断され、両者の反応は止まる。隔壁の損傷がない通常時は、ボール弁は溶融Naより重いため下方に位置し。弁口は開いた状態にあり、溶融Naは弁口を介して流通できる。

 3-2 板状隔壁の厚さ方向の中央に形成される陰極室をスリット形状とした板状隔壁⁴

 このスリット形状の陰極室を持つ板状隔壁は陰極室の容積が極めて小さい。このため陰極室に保持されている溶融Naの量も最小であり、隔壁が破壊され、隔壁内に保持されている溶融Naの全てが溶融Sと反応しても発生する熱量が極めて少なく、破壊された隔壁近くの溶融Sの温度をわずかに上げる程度で済む。このため発火等の危険性は全くない。なお、スリット形状の陰極室を持つ板状隔壁は医療用のガーゼを焼失模型として使用することにより製造できる。従来、焼失模型を使用しての板状隔壁の製造は不可能視されていたもので、陰極室をスリット形状としても陰極室として機能するのではないかとの見解から可能になったものである。

4.NaとSとの反応収束後のNaS二次電池

 NaとSとの反応が収束し、発熱も止まり、NaS二次電池は沈静化し、充放電も止まる。また電池の保温機能も止まり、電池は徐々に冷却され、溶融Naも溶融Sも冷却され、それぞれのタンク内で固化する。これによりNaS二次電池は安全に保持される。

5.引用文献

 (1)特開昭2005-267867

 (2)特開昭50-38030

 (3)特許第6732218号

 (4)PCT/JP2022/008298


学会発表内容 その3

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厚さ方向の中央にスリット状の陰極室を持つ板状隔壁を
固体電解質とするNaS二次電池

〇大川 宏1(有限会社中勢技研1)

NaS secondary battery with a plate-shaped partition wall, as a solid electrolyte,

having a slit-shaped cathode chamber in the center in the thickness direction

Hiroshi Ohkawa,1 (Yugenkaisya Cyuuseigiken ,1)

1.従来のNaS二次電池

 従来のNaS二次電池の固体電解質隔壁として、上端開口で下端が閉じた試験管形状の管状隔壁1と厚さ方向の中央部に陰極室を持つ板状の板状隔壁が知られている。管状隔壁は耐久性が高く実用化されている。板状隔壁は製作が困難で、耐久性が期待できる板状隔壁は報告されていない。

2.製作した板状隔壁及びNaS二次電池

 得られた板状隔壁は、図1にその模式図を示すように厚さ方向の中央に破線で示された厚さ0.05㎜程度のスリット状の空間(陰極室)を持つ縦横100㎜、厚さ6㎜程度の板状体です。この板状隔壁は、ガーゼを主としたシートを焼失模型としてβアルミナ造粒紛の間に    図1

配置して板状の圧密体を作成し、焼成して作成したものです。図2              図2

はニップル及びアルミナ細管を接合した板状隔壁を示す。アルミナ細管を介して陰極

室に溶融Naを導入するものです。このアルミナ細管の先端に溶融Naを保持するNaタン

クを接合し、板状隔壁及び溶融Sを内部に収納するSタンクを取り付けて製作したNaS単

電池を図3に示す。

 このNaS単電池を用いて充放電試験を行った。外部抵抗0.6Ω程度で5.1A程度の放電

電流、2.7Vの充電電圧で1.4A程度の充電電流が計測された。同じ放電及び充電条件で、18.5時間放電及び36時間充電を連続して繰り返し1カ月程度継続できた。

3.考察

 製作した板状隔壁を持つNaS二次電池の充放電試験が1カ月程度継続でき、改良によ

り実用に耐える板状隔壁を製造できる可能性は高いと判断している。この板状隔壁を

持つNaS二次電池は、自己放電の少ない、脱炭素時代に相応しい大容量で長期蓄電の可

能な二次電池として期待されていた、NaS二次電池の復権を図るものでと考えている。

 スリット状の陰極室を持つ板状隔壁は、陰極室の容積が極めて少ないため陰極室内

のNaも少なく、隔壁が破損して溶融Sと反応しても発生する反応熱が少なく、火災には

至らない。さらに、反応して生成した硫化ソーダは破面から陰極室内をNaタンク側に

向かって流れ、未反応の溶融Naと反応しNa組成の多い、高融点の硫化ソーダとなり、

自ら固化し、溶融Naと溶融Sの間に介在してそれ以上のNaとSとの反応を阻止する。この様にスリット状の陰極室を持つ板状隔壁を持つMaS二次電池は極めて安全な二次電

池です。さらに、この板状隔壁は建築用のタイルを製造するのと同じ方法、装置で     図3

簡単に多量にかつ安価に製造できる。また、NaS二次電池を構成する主な元素はNa,C,

O,S,Al,Si及びFeで地球上に豊富に存在する。このためNaS二次電池も安価に製造でき、

脱炭素の時代に必要とする膨大な電気を安価にかつ長期に蓄電できる。

(1) NGKレヴュー 第60号